「感情に流されず、感情を生かす」

職場で起こる問題の多くは、
「やり方」よりも「感情の行き違い」から生まれます。

伝えたつもりが伝わっていなかったり、
注意したつもりが傷つけてしまっていたり。
冷静でいなければと思うのに、つい感情が顔を出してしまう──

そんなとき、リーダーはこう自問します。
「自分の感情は、チームにどんな影響を与えているだろうか?」

感情を扱う力は、リーダーの隠れた武器です。
今回は、その中でも中核となる**「感情マネジメント」**について、
EQ(感情知性)の視点から掘り下げてみましょう。

「冷静さを保て」と言われても…

部下の失敗が続いたとき。
会議で理不尽な指摘を受けたとき。
一生懸命やってきた仕事にケチをつけられたとき。

どれだけ理性を保とうと思っても、感情が揺さぶられる瞬間はあります。
それなのに、リーダーという立場になると、こんな言葉をよく聞くようになります。

「感情的になるな」
「もっと冷静に対応して」
「怒りを見せるのはマネジメントとして未熟」

…でも、本当にそうでしょうか?

むしろ感情は、現場に向き合っているからこそ湧いてくる、真剣さの証ではないでしょうか。

だからこそ、感情を否定するのではなく、
「うまく扱う力」こそが、これからのリーダーに求められるスキルなのです。

感情は「消す」ものではなく、「使う」もの

日本のビジネス現場では、長らく「感情を仕事に持ち込むな」という暗黙のルールが支配していました。
しかし近年、心理的安全性やエンゲージメントの重要性が語られる中で、
感情を**“組織の力に変える”**リーダーこそが注目されています。

感情マネジメントとは、

  • 感情を押し殺すことではなく
  • 感情を正確に認識し
  • 状況に応じて適切に使いこなすこと

です。

たとえば、怒りを「伝える力」に変える。
不安を「備える力」に変える。
喜びを「共有する力」に変える。

これが、EQ(感情知性)を持ったリーダーの真骨頂です。


EQリーダーの感情マネジメント3ステップ

では、EQの高いリーダーは、どのように感情を扱っているのでしょうか?
ここでは、実際の研修でも活用している3つのステップをご紹介します。


ステップ1:気づく(認識)

まず何よりも大切なのは、「今、自分は何を感じているか」に気づくことです。

怒り、焦り、不安、悔しさ、期待、ワクワク――
感情にはバリエーションがあり、それぞれに役割があります。

しかし多くの人は、「なんかモヤモヤする」とぼんやりしたまま、
その感情に飲み込まれて行動してしまうのです。

【おすすめワーク】
「感情語リスト」を手元に置き、今の気持ちを“言語化”する習慣をつけましょう。
「私はいま、●●と感じている」と具体的に言葉にすることで、
感情と自分の間に“少しの距離”が生まれます。
それが、冷静さを取り戻す第一歩です。


ステップ2:受け入れる(評価せずに扱う)

次に大切なのは、感情を**「良い・悪い」でジャッジせずに受け止める」こと**です。

たとえば、怒りを感じた自分を「ダメだ」と責めるのではなく、
「ああ、自分は怒りを感じてるんだな」と認める。
それが、感情を“敵”にせず“味方”にするコツです。

ここでのポイントは、「感情=自分の価値ではない」と知ること。
怒ったからといって、人として未熟なわけではありません。
不安を感じたからといって、リーダー失格なわけでもありません。

むしろ、感情を感じるからこそ、人の痛みもわかるのです。


ステップ3:選ぶ(反応ではなく選択)

最後のステップは、「反応」ではなく「選択」をすること。

感情をそのままぶつけるのではなく、
「今、この感情をどう使えば最も効果的か?」と一度立ち止まって考える。

  • 怒り→率直な主張(アサーティブ)に変える
  • 不安→リスク対応策を準備する冷静さに変える
  • 喜び→チームに共有し、モチベーションを高める

感情を抑えるのではなく、戦略的に活かすことができるのがEQリーダーなのです。


【実例】怒りを“表現”に変えたマネージャー

あるIT企業のプロジェクトマネージャーBさん(30代後半男性)は、
チームのミスに対して感情的に叱責してしまう癖があり、
信頼関係が築けないことに悩んでいました。

EQ研修で感情マネジメントを学んだ後、Bさんは「怒り」を次のように扱うようになりました。

「正直、腹が立つ場面もあります。でも、そのまま怒鳴るのではなく、
“私は今回の件に対して、すごく残念な気持ちを感じている”
と言葉にするようにしています。」

結果、チームメンバーも防御的にならずに話を聞くようになり、
ミスを責める空気から「原因を一緒に見つける空気」へと変わったのです。


感情はチームの“空気”をつくる

リーダーが感情をどう扱うかは、チーム全体の“空気”に直結します。

・感情を無視して理屈だけを押し通せば、チームは冷え切り
・感情に振り回されて爆発すれば、チームは萎縮し
・感情を活かして関われば、チームは信頼と活力を得る

チームにとって、リーダーの感情マネジメント力は、空気の温度調整装置のようなものです。
だからこそ、リーダー自身が自分の感情を知り、扱えることが重要なのです。

まとめ:「感情を“扱えるリーダー”が、信頼を得る」

感情を持つのは、人間として当然のこと。
大事なのは、それを否定せず、リーダーとしてどう活かすかです。

感情マネジメントとは、抑圧でも爆発でもなく、
「感情とともに在る力」。

この力を身につけたリーダーは、
どんな場面でも人を導く“静かな強さ”を発揮します。


📌次回予告:「共感は甘さではない」
〜信頼される上司がやっている“感情の聴き方”〜

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